死ネタ








ヒロさんとは、ずっと一緒にいれると思っていた。
喧嘩も別れ話も何度もしたが、それでも居れるものだと勘違いしていた。

――弘樹が事故に遭った。
そう電話聞いたとき、頭の中が真っ白になった。
職場をほっぽりだし、がむしゃらかに病院まで走る。
幸い病院はすぐそこだ。
病室で弘樹は、死んだように眠っていた。
安堵はしたものの、よかったと喜ぶことは出来ない。
弘樹の上司から、もう目を覚ますことは無いらしいと言われたからだ。

野分は毎日見舞いに行ったが、一向に褪める気配はない。
その上一年間通い続けたのに、結局目を醒まさないまま弘樹は心配停止してしまい――死んでしまった。

案外、人の死はあっさりしたもので拍子抜けした。
もっと漫画のように、感動的なワンシーンになると思っていた。
などと野分は不謹慎ながらも考えてしまって。

正直死んだこと自体よりも、最期の最期まで声が聞けなかったということが一番ショックだった。
毎日毎日弘樹の蒼白した顔を見つめて過ごすだけ。
我が儘でも強がりでも、なんでもいいから言って欲しい。いつものような大きく人を怒鳴る声が聞きたい。
しかし、その願いは叶わなかった。

野分は声もなく泣いた。
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